2025年11月の例会報告

毎月、会長が報告して下さる例会報告です。

  • 日時:11月16日(日)
  • 例会出席者:9名

森のための用語集

 すごく難解な作品です。難解で難しいのですけれど、その難しさは、難しいとして片づけてしまうなら、片づけてしまったことに納得さえすれば、それはそれで、至極当然な出来事の流れの内に包まれて、事は済みます。なるほどなあ、そうしたことが『森のための用語集』の示す不思議な世界のことで、納得することが憚れもするけれど、次から次への階層を組み合わせしていかなければならず、この作品に内在する多重構造の仕組みに由来するものではないかと思います。一つの場面から、異なった場面への転換の、その変わり目、にあるなんとも奇妙な〈連続の断裂〉は、断裂の連続として自己消化……するのでしょう。(飛び切り高度で難解な作品ですね)

永井荷風 女性とお金 14

 永井荷風・女性とお金・「その14」で、毎回かなり長めの作品になっています。それが「14」回目ということなのですが、これまで、それほど気にはしないで読んできましたのに、今回に限っては作者のなみなみならぬ、この作品に対する思い入れのほどが目からウロコではありませんが、はっ、とわかったしだいです。もしかしたら、原稿用紙換算すると2.000枚を超えているかもしれません。数字に直すと、途端にその作者の「仕事」ぶりに頭がさがろうというものです。女性とお金…を看板にしつつ、おてんとうさまの下でも、お月さまの下でも、ただただ一生懸命にいきることにつきるでしょう。 

文芸散策・いこいの森

 冒頭のタイトルは「詩人の眠り」なのですが、「二人が睦まじくいるためには/愚かでいるほうがいい」と納得乱発するのです。狭山市には航空自衛隊があり、訓練・訓練。訓練と詩人の眠りにはトホトホです。「あなたならどうする」と、「ブルーライト・ヨコハマ」「とおくへいきたい」「神田川」「なごり雪」等々の懐かしき歌謡曲、「荻窪ドラママチ」では〈表題〉の通りに、胸膨らむドラママチです。その後に続く、街の風情や個性が…あちこち。「大和路」「ZINE文化」「涙読三題」 「師匠となる小説」「小樽エイガマチ」。このように見てくると、なんだかんだといっても、どこの町も、そこに住む人たちも、多摩蘭坂じゃあありませんけれど、おもしろくて、視点が広がります。

ハンドドリップ珈琲問題

 本物に拘る人と、拘らない人がいて、「拘ることと、拘らないこと」の顛末みたいなことをスケッチされているのかな、と思いました。こうした〈コーヒーの嗜み〉みたいなもの以上に、たしなみのルールが確立されているのは、賛同していただけると思うのですが、《茶道》なのではないでしょうか。上記のようなことは、作法といわれるようなことの、その色々でしよう。また、作法的なこと、またはその前段階のものなどなどの、「その決まり」みたいなものは様々あります。コーヒー豆を粉にしないで、そのまま口の中に入れて「噛んでコーヒー」の味を舌先で楽しんだことがありますが、中々の味でありました。舌先が、ちょっとの時間しびれたままだったのには大変でしたけれど。

ジャングルと砂漠

◎シャングルの女の子  南米アマゾンの北東にある、フランス領ギアナのキャンプでの七歳位の少女との交流は、とても暖かい。少女にとっては生きることがなによりも大事なことで、貧しいが、頑張り屋さんのところに共感しての友情のような芽生えが、読者にはうれしい。 ◎砂漠の少女――東アフリカ・ジブチ共和国  10歳位の少年が私のサックから乾パンを盗んだ。少年が逃げる背後から銃声を響かせた。弾は当たらないが、少年は砂漠に前のめりに倒れた。その少年の姉らしき少女は、弟がまき散らした乾パンを一袋、一袋、拾っては乳飲み子を包む布の中に入れていく。この、盗みなのに、盗むということの何たるかは消えてしまって、ここには貧しさだけがある。  この二つの出来事を、悪いとも、良いとも、書かない作者の「目線」はとても感動させる温かい目線でした。